メモと呼ぶには長すぎる

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既視感が先行した元来のテーマ-「世界収束二一一六/amazarashi」

 

世界収束二一一六

世界収束二一一六

 

 

 世界収束ってタイトルを冠しているように、SEKAI NO OWARI世界の終わりがテーマになっている。エンディングテーマのPVが発売に合わせて公開されたけど、その映像の中で「世界が収束する」って文字が出てたし、最後の1人が自分であるような描写とかは世界収束二一一六を通した全体のテーマに通ずるものと同義なんだと解釈した。

世界もとい生命に対する諦観と希望。全ての過去作品の根底を流れていたものを表面化させた今作に、最初は二番煎じのような感じがして、どれも面白くなさそうって感じがした。もう言いたいことは耳にタコができるくらい聞かされたっつーの!って感じで今更声を大にして言われても..もっと違う切り口の意思表示が欲しかった。

しかしながら聴いていると、これが意外と悪くない。色々と変遷してきた秋田ひろむの現在の位置が再確認できる。ただコレは余りにも歩くペースが遅すぎる気がする、早く歩けとは言わないけど、創作・前進に怠けてませんか?って密かに思ったりする。惰性で作品作ってないか少し気になる。アルバム用に埋め合わせで曲作ってないかそれが少しだけ、本当に少しだけ気になる。そんなわけないですよね、すいません。

ポエトリーリーディングが多かった印象だったんだけど、それは毎回何か新情報があったりリリースされたりする度にamazarashiの音楽を聴いていたりして、前作から今作に至るまでに初のシングル発売か2ndシングルまでも発売されて、シングルがアルバムに入ってたことと先行シングルとして2曲、計4曲もアルバムの骨組みとなる曲を事前に知っていたからそれらを除く曲目だけで評価を下すことになったらそりゃ勿論ポエトリーリーディングが以前に増して増えたような感じになるでしょ、って当たり前のことだった。先行して聴くことのできた4曲は擦切れるほど聴いた。そのせいもあって、アルバムの重厚感が足りなく感じてしまった。前作までは2曲くらいチョロっとMVでも公開してあとはアルバム買ってどうぞ!って感じだったから歌詞の密度と相まって重厚感は自ずと出てくるのは至極当然だったんだってわかってますが・・・。

 

(編集後記みたいにカミングアウトすると、ここまでを発売当日に勢いだけで執筆して、そっからモヤモヤとした日々を過ごして書き続けることが出来なかったです。今まで秋田ひろむ礼讃した文を書けなくて、このアルバムに既視感が否めなくて、ポエトリーリーディングもなんか肌に合わなくて、今までぼくのブログを見に来てくれている人たちってamazarashi大好きすぎる!!!みんなどんな感想抱いているのかな!?!?って検索かけたりしている人達だと思うし、そういう人たちの期待を裏切り、上げて落とすようにアンチになってしまう部分が所々見られると思うんだけど、それに関しては本当に申し訳ありませんとしか言いようがない。それでも、このモヤモヤを形にしたい。モヤモヤに共感してくれている人がいるかもしれない。モヤモヤを感じていても何が招待かわからない人がいるかもしれない。そういう人たちに向けて贈ろう。そう決めて筆を執ると幾分か心が軽くなった。だからぼくは今から続きを書きます。よろしくお願いします。)

 

だらだらと話さず、さっそく本題に入っていきます。 

 

1.タクシードライバー

 

 この歌を聞いてまず思ったことが、タクシードライバーという職業のみの存在、個性は一切持たない名前だけの存在に、自分の身を委ねることはつまり甘えでないのかという疑問。自殺するならさっさと死ぬのが潔いのか?

車の牽引ロープを買った伏し目がちな青年 

自宅の鴨居にぶら下げて首を括る予定
地方都市と呼ぶのもはばかられる様な町で 

地元の友人と未だつるんで たまには呑んで
息苦しさを感じながらも幸福だとうそぶいて

青い青空が青すぎてもはや黒で

自宅の鴨居で首を吊る青年は主人公ならば、死を前にして自暴自棄になっているということなんだろう。そんな精神状態のときは嫌なものしか目に映らない。青空も嫌なものに見える。自分を嘲笑うような青々とした色が今の彼にとっては黒と同義。

全体的にポエトリーリーディング調。ポエトリーリーディングより強弱をつけた音程であれば曲になってしまう。そんなamazarashiを見た。

 流れる都市の景色があまりにもきらびやかで 相対的に僕らの幸福は萎縮して

圧倒的に輝いているものの前ではその存在を認識せざるを得ない。散々些細な怒りを見つけたのに、大きすぎるものの前ではそれらは目に映らない。

 痛みを無視出来るなら人は悪魔にだってなれる
排他主義反対と疎外する人間がいて 暴力反対という暴力には無自覚な奴がいて
不良になる為には、まず良い人間にならなければ 家出するためには、まず家に住まなければ

「価値観を押し付けるな、という価値観の押しつけ」と同じような言葉遊びで「暴力反対という暴力」。すべて同じ立場から判断できる言葉って少ない。主張をすればそれは必ず欠点を孕み、争いの種となる。主張をする存在である以上この争いは消えることはないだろう。

 

2.多数決

 

 

3.季節は次々死んでいく

 

シングルとして発売されたけど、B面の「自虐家のアリー」についてはとりあげたけど、この曲については取り上げてなかったので、改めてこの場を借りて推考する。

このアルバムってこの曲から派生した一群なんじゃ?って思ったりする。表題に死という直接的な表現を入れるのがあまりにもらしくなかった。季節は次々死んでいく=過去になっていく ということで、変遷の中で前を向いていかなければならないという意思表示の歌。

 「断ち切りたい最低な日々。自分の不確かさ、曖昧さ。苦悩にまみれて尚、戦い続けなければいけない理由。東京喰種と僕らの人生の公約数を歌にするなら、きっとこういう歌です。素晴らしい作品を形作る一要素として、この歌が役目を全うできるよう願っています。」── 秋田ひろむ(amazarashi

 こんな言葉をタイアップが決まった時秋田ひろむは残している。東京喰種から想起したのかな、それとももともと有ったのかな、たぶん前者だと思うけど。

拝啓 忌まわしき過去に告ぐ 絶縁の詩
最低な日々の 最悪な夢の 残骸を捨てては行けず ここで息絶えようと
後世 花は咲き君に伝う 変遷の詩
苦悩にまみれて 嘆き悲しみ それでも途絶えぬ歌に 陽は射さずとも

夕日、泥酔、雨、登場する物質すべて影にあたる者たち。つまり「陽は射さずとも」という部分にあたる言葉。苦悩をピックアップしてもがき苦しむ姿は東京喰種の主人公と重ねられる部分があり、やはり前者なのだと再認識させられる。

 

4.分岐

 

後期衝動みたいな感じでライブで使われていくんだろうなって思った。分岐、そのタイトルがすべてを表してる。死が蔓延しているこのアルバムで箸休めみたいな感じ。不必要ってワードを「フィツヨ」って発音しているのが地味にツボ。

 

5.百年経ったら

 

タイトルが現在から100年後であることと、エンディングテーマが100年後をテーマにしたMVであることからつながっているのかな~ってぼんやりと考えたりした。

 

これもタクシードライバーと一緒でポエトリーリーディングっぽさが強い。物語調なので、全体で味わってほしい。強いてあげるならば、

裏庭の堅い実が 真っ赤になったら教えて 

 このフレーズがなんだか時間が過ぎる描写を美しくしていて好き。

 

6.ライフイズビューティフル

歌詞では「人生は美しい」といってるのに、なぜタイトルはライフイズビューティフル。

 わいは今も歌ってるんだ 暗い歌ばかり歌いやがってと人は言うが
ぜってぇまけねぇって 気持ちだけで 今まで ここまで やってきたんだ
これだけは本気でゆずれないんだ 背負ってるものが増えすぎたようだ
夢を諦めた人 捨てた人 叶えられず死んだ人 覚えているか

 これ、自身を投影しているのかな。半分事実半分虚構かな。彼が背負ってるものってなんだろう、気になる。

信じた人や物が過ぎ去る街で ありふれたどこにでもある悔し涙
そんなもんに未だに突き動かされる 人生は美しい
ファミレスで喧嘩したぶりのあいつが 電車に向かって手をふり続けていた
過ぎてゆく景色 二度と振り向かないよ 人生は美しい 

 涙に突き動かされる、すごくわかる。どこにでもあるのになぜあんなに求心力が衰えないのだろうか。美しいからなのか。ファミレスと聞くと、「少年少女」の歌詞が浮かぶ。ここだけに限らずアルバムを通して、過去作の歌詞がちらほら顔を出すんだけど、狙ってるのかネタ切れなのか、どっちなんだろか。

歌う場所はどこでもいいぜ 歌う歌がわいの歌なら 

 この気持ち忘れちゃだめだと思う。May.Jがんばってた。

 

7.吐きそうだ

 ライフイズビューティフルのアンサーソングというか、次の日の歌なんだろう。お酒の酔いに任せてテンション高く人生賛歌をうたった二日酔いで我に返る、そんな歌。

何度も僕は僕を殺し 血まみれの僕 未だ在住 心に
夜窓に不意に映るそいつは さながら亡霊か 恨めしそうな目だ
「いつでもこっちに戻って来なよ」 踏みとどまるのはいつだってギリギリだ
自分の価値観を自分で言い負かし そいつをまた否定する言葉遊び
建前を一人ずつ剥がせば 頭の中すっかり嫌な奴
そりゃそうだ一糸纏わぬ人間は そもそも獣とさほど変わらない
つまり犯人は僕自身なのだ っていうのはもう何度目のオチだ? 

 この歌詞を反芻したい。この歌でも、獣と変わらない、千夜一夜、引っかかりました。

「後悔はない」という後悔を 引きずり重い足を歩かせる
愚痴は零すな 弱音を吐くな 素晴らしい人間になろうと思うな
我慢するべきだ 身を粉にして 道に迷っても戻りはするな
優しく在れ 義理堅く 恩は返せ 借りは作るな
無償の愛だ 無償の愛か? これこそエゴか? なんて嫌な奴だ 

 引用しすぎ、つまりこの歌大好きなんです。言葉の流れ込んでくる量が多い、やっぱりポエトリーリーディングっぽいなあ。好きなんですけどね。

8.しらふ

 正統派のポエトリーリーディングが8曲目でやっと来た。

昨日出来たはずの世紀の名曲は 掃いて捨てる程ある駄作にも埋もれる駄作だ 

 曲に限らず、小説でも書いてみたら傑作ができたと思って読み直してみたらただの駄作だったという中二病こじらせマンみたいなあるある、共感してしまった。水嶋ヒロの「KAGEROU」みたいな感じですよね、わかります。

俳優、バンドマン、その日暮らしにホームレス 

 あれ、「名前」かな?

冷たい視線 山手線

ラッパーかな?

泥酔にまかせて現実をずらかった 夢も消えちゃった 「今日の仕事も辛かった」

 夢も消えちゃった って台詞が笑えてしまった。なんか言葉が浮いてません?

 

2分20秒くらいからテンポがあがり、「えっ、まさか」って思って最後の1分が苦痛になってしまった。2分40秒の「わかったもう出てくよ」で終わってほしかった。

 9.スピードと摩擦

amazarashi節全開、以前話したので割愛。

 10.エンディングテーマ

ohda-amazarashi.hatenablog.jp

 

11.花は誰かの死体に咲く

人類が誕生し約七百万年 今日までに死んだ人の全ての遺体が
土に埋まってんなら 君が生きてる町も 世界中どこだって誰かの墓場なんだ
ぞっとしない話しだが それに救われたんだ 高層ビルもアパートも墓標みたいだ
憂鬱も悲しみも思い出も 分解してくれないか 

「古いSF映画」っぽいなあって思った。

輪廻転生につながる考え、有限な物質世界において、花が咲くためには死体が土台になっているまぁ、当然のこと。

抱きしめたあの人も 向かい風の嘲笑も 讃えられる事なかった君の勝利も
一つ残らず土に還るのだ 花は誰かの死体に咲く 

 概念さえも土に還る、面白い。

かつての戦場に人が営んだとて 悲惨な事件の現場に花手向けたとて
捨てられた町に未だ木々が根付くとて 祖父へのお供え物に虫がたかるとて
虚しさに生きてその最中に笑えよ さよならは一瞬だその最中に歌えよ 

 笑えよ、歌えよ、という言葉選びは意識している。退廃思想。

 

12.収束

 

これも過去のポエトリーリーディングに似てます。もう言わなくてもわかるレベルで。

 

〆 

いろいろとデジャブで粗探しがメインになって聴いている自分がいる。だから内容について触れている文章も今まで以上に薄っぺらいチープなものになっていると思われる。今回は掲げたテーマが悪かったのかな、もともと含まれているテーマだったのをわざわざメインに据えるということが如何に難しいか、僕は知ってる。そんなぼくだから今作が肌に合わなかったのかもしれない。曲一つ一つはそこまで悪くないのにアルバム全体として好きになれない、今までのamazarashiの作品と比較して残念かなって思ってしまった自分がはっきりとここには居て、フルアルバムというハードルもあったし、ちょっと期待しすぎたところもある。しかし、だからといって見限るわけではないし、これからも継続amazarashiもとい秋田ひろむの動向は窺っていくつもり。みなさんの期待したレビューを書けず申し訳ない、そんな気持ちでいっぱい。次の作品がぼくを厚くしてくれる作品であることを祈る。(おしまい)

 

この記事は過去の記事を移転させたものです。本ブログはがんばれなんて言えないの倉庫ログです。